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脳卒中のリハビリにおける『思考を収束させるための視点』セラピスト向け


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セラピストの悩み

脳卒中リハビリに関わる多くのセラピストは、「自分が何をすれば患者さんが本当に良くなるのか」がわからず、日々悩みながら臨床に向き合っています。


だからこそ、知識を増やし、評価法を学び、ハンドリング技術を磨こうと努力します。しかし、どれほど勉強を積み重ねても、「自分の臨床に確信が持てない」という壁にぶつかることは少なくありません。


その理由は単純で、「思考過程が常に発散してしまうため」です。医学は細分化・専門化を本質とした学問であり、学べば学ぶほど情報は増え、理解は複雑になり、答えは一つに絞れなくなります。


細かい症状・検査所見・筋力・感覚・動作…どれも重要に思えてしまい、

臨床で何を優先すべきなのかわからなくなる。これがセラピストの悩みの根本です。


脳卒中の本質:損傷した神経の再構築

脳卒中の本質は「脳神経の損傷」です。そしてリハビリとは、その損傷された神経の再構築を促す行為です。


つまり、脳卒中リハビリの本質は

『損傷された神経ネットワークをいかに賦活するか』

この一点に集約されます。


どれほど症状が複雑に見えても、結局は

  • どこの神経が損傷したのか

  • その神経はどんな働きを持つのか

  • どうすればその神経が再び活動しやすくなるのか


この3点だけを考えればよいのです。


思考を「損傷部位 → 賦活方法 → 今日の実践」に一本化する


今回の図に示したように、脳卒中の症状は多岐にわたります。しかし、その根底には明確なパターンがあります。

① 基底核障害 → 動作手順の障害 → 基底核を賦活する刺激 → 例:トイレ動作の手順訓練

基底核は自動運動の調整を担います。→ 自動性を引き出す運動・手順化が賦活のカギ。

そのため、トイレ動作を通して不必要な動作の抑制や動作のストップなどを実施。


② 皮質脊髄路障害 → 運動麻痺・痙性 →皮質脊髄路 の賦活方法を検討 → 例:膝の屈曲

随意的な筋収縮に関わるため、麻痺と痙性が混在します。→ 明確な随意性を引き出す運動(例:単関節運動)が効果的。


③ 視床皮質路障害 → 感覚障害・感覚性失調 → 感覚経路の賦活方法を検討→ 例:膝屈曲のフィードバック

感覚フィードバックの障害が動作の不安定さを招く。→ 運動に感覚入力をセットで与えることが重要。


④ 上縦束障害 → 半側空間無視 → 賦活方法 → 例:右から左への刺激提示

注意ネットワークの連結障害。→ 注意の方向づけを意図的に誘導する刺激で賦活。


⑤ ウェルニッケ野障害 → 感覚性失語 → 賦活方法 → 例:単語の視覚提示・単語指示

音声言語理解を担う領域。→ 意味を最小単位にして提示することで理解ルートを再構築。


「症状×動作×行為」に迷う必要はない

臨床では、

  • 症状

  • 動作

  • ADL

  • 行為レベルすべてが複雑に絡み合い、無限の組み合わせが存在するように思えます。

しかし、リハビリの本質はただひとつ。


“損傷部位をいかに賦活するか”

この一点が定まれば、症状に惑わされず、動作に迷わず、ADLのアプローチも明確になります。

 セラピストに必要なのは「思考の収束」

多くのセラピストが悩むのは技術の不足ではなく、問題の本質をどこに置くべきかが定まっていないからです。

  • どの筋が弱いか

  • どの動作が苦手か

  • どの評価表が点数低いか

これらは重要な情報ですが、最終目標ではありません。

最終目標はただひとつ。

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「損傷部位を賦活するために、今日何をするか」

図の右端にある「今日やること」は、その思考が収束した結果です。

セラピストがこのシンプルな思考軸を身につければ、臨床の迷いは劇的に減り、患者さんに必要なアプローチを確信をもって選択できるようになります。

 
 
 

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