Since
2018
ご挨拶
夢から現実へ

自己紹介
作業療法士の山本秀一朗(やまもと しゅういちろう)と申します。
私はこれまで、急性期から回復期、そして生活期に至るまで、脳卒中を中心としたリハビリテーションに長年携わってきました。病院・施設・在宅支援など、あらゆる環境で患者さんと向き合い、その人らしい生活の再構築を目指して支援してきました。
その中で、私の中には次第にある疑問が強く芽生えてきました。
「麻痺が残っていても、歩けるようになれば十分」
「180日に近づいたから、もう退院してよい」
「回復には限界があるから」
こうした“線引きされたゴール”が、いつの間にかリハビリの目的そのものになってしまっている現状に、
私は強い違和感を持つようになりました。
私はこう考えています。
「なぜ、完全に元の身体に戻ることを望んではいけないのか?」
「なぜ、“本当にやりたいこと”を、リハビリの目標にしてはいけないのか?」
そうした想いから、私は保険診療の枠を超えた自費リハビリの提供を始めました。保険制度の範囲ではどうしても限られた時間・量・方法でしか支援できないことが多く、特に慢性期の方や、高次脳機能障害を伴う方に対しては、本当に必要な支援が十分に届けられないと感じたからです。
■ 後遺症の“見える化”と18タイプ分類
私たちがまず大切にしているのは、「細かく、正確に、丁寧に評価すること」です。後遺症の症状は、一見似ているようでも原因がまったく異なることがあります。たとえば、同じ「右手が動かしづらい」という訴えでも、それが筋出力の問題なのか、感覚のフィードバックの問題なのか、あるいは身体図式の障害によるものなのかで、アプローチは大きく異なります。
そのため、当院では脳卒中後の後遺症を18のタイプに分類し、それぞれの方がどのタイプに当てはまるかを診断した上で、回復のためにどの脳の領域をどのように再活性化すべきかを明確にしていきます。
この分類によって、
「なぜ今この運動をしているのか?」
「自分の脳はどこが問題なのか?」
「何を鍛えれば回復するのか?」
が本人にも“見える化”され、治療の納得感と継続性が大きく変わってきます。
■ 永遠に通わせないリハビリの設計
当院がもう一つ大切にしているのは、“自分で自分のリハビリができるようになる”基盤作りです。
当院では、「一生通い続けるリハビリ」ではなく、「自分で回復を導ける力を身につける」ことを最終目標としています。丁寧な評価に基づき、「いま何を目的に行っているか」「どの動きが改善しているか」を患者さま自身が理解しながら取り組むことで、自主性と回復力が飛躍的に高まると考えています。
そのために、私たちは
・正確な評価(主観と客観の両面)
・リハビリの“狙い”を患者自身が理解すること
・課題の自己選択・自己調整のトレーニング
を重視しています。
たとえば、発症から5年経ったある方は、もう改善しないと諦めかけていましたが、体性感覚と前庭感覚の統合不全が明確になり、2ヶ月間の集中介入を実施。最終的には転倒なく買い物に出かけられるようになり、「やっと自分の身体を取り戻せた」と笑顔で話されていました。
リハビリを受け続けるのではなく、**“卒業できるリハビリ”**を提供すること。
それが私たちの支援の基本姿勢です。
■ 「歩くこと」だけでなく「手の回復」への特化
そして当院が強くこだわっているのが、「手の回復」に対する専門的なアプローチです。
「歩ければいい」「日常は代償で乗り切れる」——
一般的に、脳卒中後の「手の回復」は非常に難しいとされています。
動きが細かく、感覚との連携が重要である手は、評価と訓練方法が適切でなければ変化が起きにくい部位です。
そう言われてきた手の麻痺に対し、私たちは本気で改善を目指します。
手の回復には、筋力や動きだけでなく、感覚の再統合、空間認知、利き手としての意識といった高度な機能が関係します。
だからこそ、当院では
・視覚と運動の協調性
・触覚・位置覚・動きの知覚の再学習
・目的を持った手の使い方(道具操作、創造活動など)
といった要素を、細かく組み合わせて介入します。
実際、発症から1年以上経った女性の方が「もうこの手は使えない」と話されていたケースでも、イメージ運動や視覚刺激、随意運動の引き出しを行ったことで、日常の中で自然にコップを持ち替えたり、洗濯バサミを使って干す作業ができるようになりました。
「足の回復は移動の自由」「手の回復は生活の質の自由」
どちらも欠かせない、人としての“取り戻すべきもの”です。
最後に
もし今、「これ以上は難しい」「回復はもう限界かもしれない」と感じている方がいらっしゃれば、
私はその思いに寄り添いながら、新しい選択肢を一緒に探していきたいと考えています。
「完全に元に戻ることをあきらめない」
「本来の人生を取り戻すことを信じる」
そのために、これからも私は、現場の一人ひとりと真摯に向き合い続けてまいります。
脳PLUS 代表
作業療法士
山本 秀一朗
