【被殻出血ってなに?】〜動きが止められないのはなぜ?〜
- ー しゅう
- 5月23日
- 読了時間: 4分

◆ 「最近、動きが変なんです」――それ、脳からのサインかもしれません。
「歩き出すと止まれない」「手を伸ばしたら突っ張ってしまう」「立っちゃダメだとわかっているのに、急に立ってしまった」「周りが気になってキョロキョロしてしまい、集中できない」
こうしたお悩みを抱える患者様がいらっしゃいます。実はこれ、「被殻出血(ひかくしゅっけつ)」と呼ばれる脳出血が原因で起こることがあります。
今回は、「動きすぎてしまう」「動きを止められない」という状態がなぜ起きるのか、どのように向き合っていくのかを、患者様にもわかりやすくご説明します。
◆ 被殻出血ってどんな脳の病気?
被殻とは、脳の奥にある「大脳基底核」という場所の一部です。この大脳基底核は、運動の「準備・調整・ストップ」を担当しています。
被殻に出血が起こると…
必要な動きだけを選ぶ力
動きをやめる力(抑制)
スムーズな切り替え
これらがうまくいかなくなります。
たとえば、車でいえばアクセルを踏みっぱなしでブレーキが効かないような状態。それが「抑制できない動き」として現れるのです。
◆ 「動きが止まらない」ってどういうこと?
以下は、実際の患者様の例です。
【例1】トイレでの立ち上がり
座ったままでいてほしい場面なのに、「立ってしまった」→ 本人は「立たなきゃ」と思っていないのに、身体が勝手に動いてしまうのです。
【例2】歩行時の止まりにくさ
「止まろう」と思っても、足が前に出続けてしまう→ 転倒リスクが高まります。
【例3】視線がキョロキョロする(サッケードの異常)
→ 本人の意思とは関係なく目が動いてしまい、テレビや本に集中できない。
【例4】手足の突っ張り
→ 手を伸ばそうとしても途中でガクガク。筋肉に「抜け」がないため、動きが硬くなる。
これらすべてに共通しているのが、「動きを始める/止める」というコントロールが難しくなるという特徴です。
◆ 被殻の役割って?
被殻は「動きのスタートボタン」と「ストップボタン」の両方を調整しています。
この被殻は、大脳基底核の中で「運動ループ」や「眼球運動ループ」と呼ばれる回路の中心部分です。
「運動ループ」:手足の動きを調整します。
「眼球運動ループ」:目の動きをコントロールします。
これらが正常に働いていれば、私たちは必要な時だけ動き、不要な動きは止めることができます。でも、被殻出血があると、こうした機能がうまく働かず、意図しない運動や突発的な動きが出てしまうのです。
◆ なぜ「動かない」麻痺も起きるの?
「動きすぎる障害」だけでなく、「動かない麻痺」も一緒に起こる方もいます。
それはなぜか?
被殻のすぐそばには、「内包(ないほう)」という神経の幹線道路があります。この内包は、脳から手足に「動け!」という命令を運ぶ通り道。出血が内包にまで広がると、その命令が手足に届かず、動かなくなってしまうのです。
つまり:
障害部位 | 起こる症状 |
被殻(大脳基底核) | 動きが止まらない、抑制できない |
内包 | 手足の麻痺、動かない |
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